医療事務と言って真っ先に思い浮かぶのは、病院や医院・クリニックなどの医療機関の受付窓口の仕事ではないでしょうか。ここでは、まず一般に言う医療事務の仕事にはどのようなものがあるのかを整理してみましょう。
受付窓口業務
患者さんは医療機関を受診すると、まず受付窓口に健康保険証(被保険者証)を提示します。
すると、受付窓口の担当者はカルテ(診療録)を作成します。そのカルテを診察室に持っていくと医師の診療が始まります。
患者さんの診療が終わると、受付窓口の担当者は医療費を算定して、医療費を患者さんから徴収します。ここまでは、患者さんから目に見える毎日の受付事務です。
保険請求業務
医療事務の仕事には、もう一つとても重要な仕事があります。
それは、毎月の保険請求業務です。実は、患者さんが会計窓口で負担する医療費は、一部を除いて全額ではありません。
患者さんが加入している健康保険者がその一定の割合を負担していて、患者さんは残りの一部を医療機関に支払っているのです。
医療機関は、カルテをもとに患者さんから徴収しなかった医療費を審査機関に提出して請求します。この請求業務は毎月ごとにレセプト(診療報酬明細書)を作成して審査機関に提出します。
このような業務は、医療機関の経営にとって非常に重要であり、専門的な知識と技能を持った人が従事した方が業務は円滑に進むので、医療事務の資格を持った人材が求められているのです。
医療事務の資格にはどのようなものがあるのでしょうか
医療事務の資格は有名ですが、医療事務以外でもさまざまな資格があります。そこでどんなものがあるか見てみましょう。
窓口業務と毎月の保険請求業務の知識と技能を学べる資格
医療事務の資格は、医師や看護師のような国家資格ではなく、英検や漢検のような民間の技能資格なので、資格を認定する団体や教会によっていろいろな名称があります。
例えば「メディカルクラーク検定(医療事務技能審査試験)」は、ニチイの講座を受講して受験できる資格です。また、「医科 医療事務管理士(R)技能認定試験」は、ユーキャンの講座を受講して受験できる資格です。「診療報酬請求事務能力認定試験」は、国の内閣府が認定する公益財団法人日本医療保険事務協会が実施する資格で、合格率は30%前後と難易度の高いものとなっています。
医事コンピューター技能検定試験
今や大病院からクリニックまでコンピューターを使わないところはほぼ無いと言っても過言ではないでしょう。現場では、医療事務の知識に加えてコンピューターの操作に習熟している人材はなくてはならない存在です。この資格では、患者の登録や医療費の算定、レセプトの作成を速やかに行えるようになるために、医事専用のシステムを使って技能を学びます。試験の内容は、医療事務、コンピューター関連の知識、実技の3科目です。医療秘書教育全国協議会が実施する試験ですが、ニチイや日本医療事務協会などでも類似の講座と試験を実施しています。講座では、多くの病院で導入が広がっている電子カルテの操作についても学ぶことができます。
医師事務作業補助者・医療秘書
これらの資格は、窓口業務と毎月の保険請求業務から離れた事務の資格です。医師事務作業補助者は、医師の事務作業の負担を軽減するためにできた比較的新しい資格です。診療報酬制度では、医師事務作業補助者を条件により一定数配置することで報酬を加算できるようになりました。仕事の内容は、カルテや診断書の代行入力、カンファレンスの準備、症例登録などを行います。
医療秘書は、医師のスケジュール管理や来客の接待、学会の資料を作成するなど幅広い業務を行います。これらの資格は、ニチイや医療秘書教育全国協議会、全国医療福祉教育協会などで学ぶことができます。医療秘書については、専門学校でも学ぶことができます。
歯科医療事務
歯科医院での窓口業務とレセプト作成が主な業務になりますので、その知識と技能を学びます。歯科は独自の診療報酬制度がありますので、他科とは異なる知識が必要となります。また、器具の消毒や診療の準備などのアシスタント的な業務を行うこともあります。ニチイや日本医療事務協会などの講座を受講して受験します。
調剤薬局事務
調剤薬局での窓口業務と保険請求業務の知識と技能を学べる資格です。調剤薬局では、患者さんが処方せんを持ってきます。その処方せんを預かって必要なことを登録し、薬剤師に調剤を依頼します。次に、調剤と薬剤、その管理・指導料などを算定し、患者さんから医療費を徴収します。そして、毎月のレセプト(調剤報酬明細書)を作成し、保険請求を行います。この資格もニチイや日本医療事務協会などの講座を受講して受験します。
医療事務の仕事内容やさまざまな病院に関係する仕事の種類
以上が主な医療事務の資格になります。いずれの資格も通学や通信で学ぶことができます。医療事務の仕事には、資格を持っていなくても就職することはできます。しかし、何の知識や技能もなく現場に入り、多忙な仕事をこなすのは簡単なことではありません。資格を取ったということは、即戦力として働く準備が整ったということです。どんな資格が自分に合っているか、仕事の内容をイメージしながら選択することが大切となります。
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